心に残る利用者さんからの言葉(介護士の体験談)
介護士として働く中で、みなそれぞれに、利用者さんから言われた言葉が今も心に残っているという人も多いのではないでしょうか。
もちろんそれは良い言葉だけではなく、時には厳しい言葉もあることでしょう。日々利用者さんに接している中で、温かい言葉をかけられたり、叱られたり、時には一緒に泣いたり笑ったりなど、介護の中で様々なことを学びますよね。
今回はそれぞれの職場で働く介護士の皆さんの体験談として、利用者さんの言葉を紹介できればと思います。
「これが最後の桜だね・・・」
ショートで介護士として働いているAさんの心に残る言葉です。桜の花が咲く頃になると、必ずショートを利用し、お花見を楽しむ利用者さんがいました。
毎年施設のまわりには、桜並木が広がり、満開の花咲かせるのですが、たまたまその年の桜は開花が予想以上に早く、その利用者さんが入所する時にはすでに桜の花びらが散り始めていたのです。
それでもショート入所までには何とか間に合い、すでに散り始めてはいましたが、桜吹雪の中を散歩することができました。
そしてそのお花見の最中、桜の花を嬉しそうに眺めながら、突然独り言のように「桜はこれで終わりだね・・・」と」つぶやかれたのです。
当時の自分は、今年の桜はこれで終わりだという意味だと理解したのですが、ショート退所後1カ月も経たずに、その利用者さんは亡くなりました。
今思うと、あの時に見た桜が自分が生きている間に見る最後の桜だと言う意味ではなかったのか・・・であれば、あの時本当に桜が見られて良かった・・・と今でも桜の花が咲く時期になると必ず思い出しています。
「大丈夫か?少しは慣れたか?」
これは、特養の介護士として働くBさんの心に残る言葉です。
Bさんが仕事を始めたばかりの新人の頃は、めまぐるしい業務の多さや慣れない仕事に戸惑うばかり・・・きっと常におどおどしていた表情を見せていたのでしょう。
もちろん先輩から厳しい声をかけられることも多く、利用者さんへの対応等にもきっと緊張していたのだと思います。
そんな私に対し、入浴介助の時には、緊張しないように気をつかって自分から話をしてくれたり、トイレ介助などで人がいない所で「大丈夫か?少しは慣れたか?」と毎回声をかけてくれたり・・・未熟な私は、当時多くの利用者さんの何気ない言葉に助けられました。
「あー気持ち良かった!極楽極楽・・・」
これは訪問入浴のスタッフとして働いていたCさんの心に残る言葉です。自宅で終末期を迎えた利用者さん。
入浴が大好きな方で、毎回訪問入浴を楽しみにしていました。しかし本人の状態は毎週訪問するごとに状態が悪化し、好きな入浴ができず清拭等で対応することも増えてきました。
そんなある日、本人や家族から主治医に対し、「どうしても湯船につかりたい・・・」と希望が伝えられ、家族や主治医、ケアマネ、サービス関係者等で検討が行われたのです。
主治医からは、確かにリスクもあるけれど、恐らくこの入浴が最後になるかもしれないとのことで、話し合いの結果、入浴に踏み切ることになりました。
入浴当日は、午前中に主治医の訪問診療を受け、何とかその日の午後訪問入浴を利用することができたのです湯船につかった利用者さんからは「あー気持ち良いね!極楽極楽・・・」とか細い声がずっと聞かれていました。
その翌日、利用者さんは家族に看取られて亡くなりましが、あの日あの時に入浴ができたこと、またその時の嬉しそうな表情は今でも忘れられません。
「生き物ひとつ大事にできない人間に、介護なんか務まるか!」
これは、デイの介護士として働いているDさんの心に残る言葉です。
Dさんが初めて働き始めたのは、新規開設したばかりのデイサービスでした。当時開設当初ということもあり、とにかく利用者さんの対応に追われる毎日が続きました。
そんな中で、ある日一人の男性利用者さんが、突然声をあげて怒り出したのです。その利用者さんに呼ばれるまま窓際に行くと、開設祝いとしていただいていた様々な植木が、みなカラカラになっていたのです。
「ここに並んだ植木だってみんな生きているんだ・・・こんなに枯らすまでほっぽり出しておくとは・・・生き物ひとつ満足に世話ができない人間に、介護してるなんて言われたくない!」と、怒りをあらわにしていたのです。
この言葉を聞いたスタッフの多くが、その時初めてその枯れた植木の存在に気づいたといいます。 「気づきの大切さ」を改めて実感したといいます。
まとめ
いかがでしたか。介護の仕事はとても過酷な現状だといわれていますが、その一方でやりがいを感じられる仕事でもあります。
いつの間にか経験を積むと、慣れてしまいがちな業務ですが、今回のように、何気ない言葉がきっかけとなり「この仕事をやっていて良かった」また「こうしたことに気をつけなくちゃ・・・」など感じたことは、常に心に残していきたいものですね。